1.「イムニス® サイトケラチン18F EIA」について

2.NAFLD/NASHとは

3.本キット・検査の位置づけ

4.本キットの臨床性能について

5.本キットの原理について

6.本キットの概要

7.保険収載情報

8.よくあるご質問

1.病態疫学

●NASH(非アルコール性脂肪肝炎)とは

NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)は主にメタボリックシンドロームを有し、脂肪肝を認めた病態です。NAFLDは、病態がほとんど進行しないNAFL(非アルコール性脂肪肝)と、進行性で肝硬変や肝がんの発症母地となるNASH(非アルコール性脂肪肝炎)に分類されます。
NASHは、病理学的には、脂肪化に加え、炎症、風船様変性、線維化が認められます。

●MASLDとは

MASLDとは「metabolic dysfunction associated steatotic liver disease(MASLD)」のことです。2023年米国肝臓学会、欧州肝臓学会、ラテンアメリカ肝臓学会が中心になりこれまでのNAFLD/NASHの定義が変更されました。まず、脂肪性肝疾患を「steatotic liver disease(SLD)」と定義することになりました。従来のNAFLD、NASHはメタボリック症候群の基準の一部を満たす場合、「metabolic dysfunction associated steatotic liver disease(MASLD)」、「metabolic dysfunction associated steatohepatitis(MASH)」と診断することになりました。また、アルコール性肝疾患は「alcohol-associated (alcohol-related) liver disease(ALD)」、飲酒量がアルコール性肝疾患とNAFLDの中間でメタボリック症候群の基準の一部を満たす場合は「MetALD」、NAFLDでメタボリック症候群の基準のいずれも満たさない場合は「cryptogenic SLD」、薬物性、Wilson病などに起因する場合は「specific aetiology SLD」と診断されます。

●疫学とは

成人の4人に1人(25%)がNAFLDに罹患するとされています。NAFLDの約25%がNASHに罹患し、そのうち25%程度が肝硬変に進行します。さらに、NASH肝硬変は10年で25%前後に発癌を認めます。よって、NAFLD 100人のうち肝硬変に至るのは6~7人で、最終的に肝臓がんに至るのは1~2人程度と推定できます。
[角田圭雄: 明日の臨床 31: 1-12, 2019]

2.CK-18F

●サイトケラチンとは?
サイトケラチン (Cytokeratin, CK) は上皮性細胞の細胞骨格を成す直径7~11nmの中間径フィラメントで20種類ほどのサブタイプに分類されます。これらは等電点の違いによって、分子量の小さい type Iと、分子量の大きい type IIに大別され、この両者が組み合わさったヘテロ二量体で網状のフィラメントを構成しています。
●CK-18とは?
サイトケラチン18(CK-18)は分子量45 kDaの酸性ケラチンで、CK-8とともに存在し、肝臓蛋白質の約5%を占め、CK-18とアポトーシスとの関連があることが報告されています。CK-18は肝細胞を含む上皮系細胞に多く発現します。
●CK-18Fとは?
CK-18Fは、傷害を受けた肝細胞でアポトーシスが生じた結果、血液中に放出されることが知られています。上皮系細胞においてアポトーシスが誘導されると CK-18がカスパーゼによって切断され、フラグメント(CK-18F)が生じます。
●CK-18Fの正常値は?
CK18Fは健康な人にも発現しています。当社の臨床性能試験では、健康成人64例(男性47例、女性17例、年齢平均値27.5歳)について血清中のCK-18F値を測定し、95%信頼区間から算出した基準範囲は、36~205 U/Lでした。
●CK-18Fが高値となる疾患は?
このキットでは、NASH以外でCK-18F高値となる疾患について、検討しておりません。なお、胃がん、肺がん、消化器癌でCK-18F発現量が上昇することが報告されています。
[Weng YR, et al: Mol Cancer Res 10: 485-493, 2012.]
●NASHではCK-18Fが高くなる?
本キットを使用した試験で、非アルコール性脂肪性肝疾患NAFLD患者 246例(非アルコール性脂肪肝炎NASH 185例、非アルコール性脂肪肝NAFL 61例)において、NAFL 244.156 U/Lと比較して、NASH 507.695 U/Lと、統計的有意に高値となることが示されています。(P < 1.31E-10)。

3.検査の利用方法

●CK-18Fはどんなときに測定しますか?
NAFLD患者さんでNASHの可能性を疑う時に測定します。線維化が進展していないNASHでも、CK-18Fが高値の場合には、NASHの可能性があります。
●CK-18Fと線維化マーカーの活用について
NASH(非アルコール性脂肪肝炎)の疑いがある場合には肝臓専門医への紹介が必要です。当社の臨床性能試験結果から、線維化指標であるFIB-4 indexとCK-18Fを組み合わせた2ステップ診断アルゴリズムが提唱されました。
まず、1st stepとして線維化マーカーを測定します。例えば、FIB-4 indexは一般の血液の生化学検査結果(年齢、AST、ALT、血小板)から計算できます。

FIB-4 index =(年齢(歳)× AST(IU/L))/血小板数(109/L) ×√ALT(IU/L)) 血小板数 109/L: 0.1万/μL
FIB-4 indexが2.67以上の場合は、NASHの可能性が高いので肝臓専門医に紹介します。FIB-4 index 2.67未満の場合は、2nd stepとしてCK-18Fを測定します。CK-18Fが260 U/L以上であればNASHの可能性が高いとして肝臓専門医へ紹介、260 U/L未満であれば経過観察します。
●CK-18F値と肝生検との関係について
NAFLDはNASHとNAFLに分類されますが、NASHの鑑別診断は肝生検で行われます。NAFLD患者について、肝生検でNAFLとNASHに分類した判定結果と、CK-18F測定値を比較したところ、NAFLに対しNASHのCK-18F値は有意に高くなりました。ROC曲線下面積は0.774でした。
●CK-18Fと他の線維化マーカーとの違いは?
CK-18Fはアポトーシスマーカーであり、線維化を評価するマーカーではありません。実際、NAFLD患者において血清中CK-18F値と組織所見の Brunt線維化Stagingを比較した結果、線維化は線維化初期の段階で有意に増加し、高度な線維化の場合にはCK-18F値に差は認められませんでした。
 また、血清中におけるCK-18Fと各線維化マーカー(FIB4 index、Ⅳ型コラーゲン・7S、Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体)の相関係数は「弱い相関」かあるいは「相関がない」ことから、CK-18Fと線維化マーカーを相補的に組み合わせて使用することができます。
●CK-18Fと組織診断との関係について
本キットの臨床性能試験において、肝生検による組織所見(脂肪化、炎症、風船様変化、線維化)と血清中CK-18F値を検討した結果、特に風船様変化の進行に伴いCK-18F値は有意に高値となりました。このことからCK-18Fは、早期の風船様変性検出に有効であることが示唆されました。CK-18Fは活動性を示すNAFLD activity score (NAS) との相関性も良好で、NASHの活動性を反映するマーカーと考えられます。
●CK-18Fと画像診断との関係について
本キットの臨床性能試験では、CK-18F値と画像診断の比較は行っておりません。

4.本キットについて

●測定方法はどのようにしますか?
本キットの測定原理は、1ステップの酵素免疫測定法(ELISA)です。
●測定原理はどのようなものですか?
抗CK-18(サイトケラチン18)抗体固相プレートにCK-18F(サイトケラチン18フラグメント)を含む検体を加え、さらにカスパーゼによってCK-18が切断されて露出したCK-18F部分を特異的に認識する標識抗CK-18フラグメント抗体を添加すると、固相化抗CK-18抗体/CK-18F/酵素標識抗CK-18F抗体のサンドイッチ免疫複合体が形成されます(1次反応)。洗浄後、酵素基質を添加すると、検体中のCK-18F量に応じて呈色反応が進行します(酵素反応)。反応停止後吸光度を測定し、標準液で作成した検量線から血清検体中のCK-18Fの濃度を求めます。
●キットの性能を教えてください
本キットの性能は以下のとおりです。(管理用物質は自社標準品で値付けしたもの)
①感度試験 標準液0 U/Lと標準液125 U/Lを3回測定するとき、125 U/Lにおける吸光度の平均値-2SDは0 U/Lにおける吸光度の平均値+2SD以上です。
②正確性試験 管理用検体 L、M、H を3回測定するとき、CK-18F測定値の平均値はいずれも既知濃度の±20%以内です。
③同時再現性試験 管理用検体L、Hを3回同時に測定するとき、CK-18F測定値のCV値はそれぞれ10%以下です。
④測定範囲(例示)
自社標準品の場合の測定範囲は35 U/L~2000 U/Lです。
●血清検体の測定における同時再現性について
低濃度のヒト血清検体では、測定値の再現性が低下する場合があります。なお、社内検討(n=23)では、検量線下限の125 U/L以上のヒト血清18検体はいずれも同時再現性CV値が20%未満でした。

5.検体について

●測定対象はなんですか?
測定対象は、M30抗原です。
●検体の種類はなんですか?
ヒト血清です。
●検体保存、安定性について教えてください
可能な限り新鮮な検体を用いてください。
検体を保存する場合は、4℃で1週間以内としてください。
長期間保存する場合は、-80℃で保存して下さい。弊社における検討で、検体は-80℃で2年間安定であることを確認しています。
●検体の凍結融解の繰り返しはできますか?
検体の凍結融解の繰り返しは避けて下さい。

6.保険収載

●CK-18Fは保険適用されていますか?
2024年1月1日に保険収載されました。
●CK-18Fの保険点数について教えてください
測定項目:サイトケラチン18フラグメント(CK-18F)
測定方法:酵素免疫測定法(定量)
主な使用目的:血清中のヒトサイトケラチン18フラグメント(CK-18F)濃度の測定(非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の診断の補助)
保険点数:194点
準用診療報酬区分:D007-48 Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体、マロンジアルデヒド修飾LDL (MDA -LDL) 、オートタキシン
検体検査判断料:D026-4 生化学的検査(Ⅰ)判断料 144点
●CK-18Fと他線維化指標と組み合わせた場合の保険算定について
本検査と「37」のプロコラーゲン-Ⅲ-ペプチド(P-Ⅲ-P)、「36」のⅣ型コラーゲン、「40」のⅣ型コラーゲン・7S、「43」のヒアルロン酸、「48」のMac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体又は「48」のオートタキシン、「56」のELFスコアを併せて実施した場合は、主たるもののみ算定します。

9.資料請求

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